皆様GWはいかがお過ごしでしょうか?
数年ぶりに保守・メンテナンス・バージョンアップなどの作業がないGWを過ごしております。
今日はすこしばかり、趣をかえて、お金周りのお話をしたいと思います。
「免税事業者だよね?それなら消費税なしでいいよね」
「フリーランスだから、安いでしょ」
フリーランスで仕事をしているとこのようなお話をよく聞きます。ということで少しばかり個人的な見解を
「免税事業者だよね?それなら消費税なしでいいよね」
消費税には、何かを買った時に支払う「支払消費税」を何かを売った時にお客様から預かる「預かり消費税」がありますが、「預かり消費税」ー「支払い消費税」が納税額になりますよね。
例えば、
100万円の商品(サービス)を売った時にお客様からお預かりする消費税は「8万円」
100万円の商品(サービス)を提供する際に必要になった経費等が60万円かかった場合、経費とともに支払う消費税は「4万8千円」
最終的に税務署に納める消費税は「8万円」ー「4万8千円」=「3万2千円」になります。(それでないと国は中間業者が増えれば増えるほど納税額が増える事になるので、アタリマエのことなんですが・・・)
個人事業主になったばかりの方は迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?私は、過去サラリーマン時代に参加していたプロジェクトでレジ関係や経理系のシステムに携わった経験から独立する際にあまり迷わずに済みましたが。
「免税事業者だよね?それなら消費税なしでいいよね」ということは「8万円」はもらえないけど、「4万8千円」は支払わなければいけないことになります。つまり「免税事業者だよね?それなら消費税なしでいいよね」=「自分で払う消費税は持ち出しで払ってね?」という事になってしまうのです。
この問題は単純な計算式や言葉の綾ではなく、見積り時(見積書)に正しく提示していなかったり、発注時(発注書)に記載されていなかったりが原因になることが多いです。私の場合、見積時には必ず「税抜」か「税込」かを必ず記載しますし、見積を出す前のヒアリング際などに、取引先がどのような考え方なのかを聞き出してみたりしています。
では、上記の例で言う3万2千円はどうなるのでしょう。
消費税として受け取っておきながら、懐に入るんでしょ?そうです、懐に入るんです。それが「免税事業者」という制度ですから。ただ、全て入るかというと、そんなことはありません、当然この3万2千円も利益(課税対象額)に加算されますので、その他の税金はかかっています。
普通に値引き交渉をされれば、お客様の状況やこちら側の状況に合わせて柔軟に対応しますが、「免税事業者だよね?それなら消費税なしね」の場合、取引自体を考えてしまうことも多々あります。
何気に多いんです、こういう考え方の会社さん・・・
「フリーランスだから、安いでしょ」
これは難しい問題ですね。「はい」という部分もあれば「フリーランスだからじゃないですよ」という部分も・・・
まずは「はい」という部分
必要経費は法人に比べれば確実に安いですよね、私の場合、オフィスを構えるわけでもなく、人事・経理・総務のようなコストセンターを抱えるわけでもないです。ただ、ここで重要なのは経理・総務のような業務が一切ないかというと絶対にそんなことはありません。請求書は作成しますよね?経理作業もありますよね?当然受注につながらない営業活動もありますよね?そういう部分のコストが法人さんに比べると格段に安いので、お見積り自体も安くできる事はありますね。逆に言うと、そういう部分のコストも踏まえて、単価を考えています。
過去にお見積りを出したお客様の中には経費なんて殆どかからないんでしょ、いいよねぇ売上そのまま自分の給料だもんね・・・などとおっしゃる方もいらっしゃいました。多くの場合従業員の方で、経営層の方にはほとんど言われたことはありません。
今は取引をお断りした会社の若い従業員の方にご説明したことがあります。「貴方は会社でパソコンを自分の給料から買いますか?普段使う文房具や出張時の交通費、電話代、光熱水費なども自分の給料から出していますか?各種福利厚生の半分は会社が出してくれていることを知っていますか?」こんなお話をしたところ、何も言えなくなってしまいました。(私の悪いところですね・・・相手を追い込んでしまう:笑)従業員の方なら仕方ないと思います。基本的には会社の経費を詳しく理解している人なんて少ないでしょうから。私自身も、過去在籍していた会社で給与計算の詳細の仕組みを理解したり、雇用保険や厚生年金の手続きを自分自身の手でしたりして覚えたことですが。
ただ、経営者の方は違います、事業を運営する上で必要となる経費はさすがに経営者なら理解されているとおもいます。先日営業に行った会社で社長さんから「社長:フリーランスの方はいいよね、日単価5万円で仕事請けおったら月収100万だもんね」「私:月商100万ですけどね・・・」この会社はお見積りをしましたが当然取引は成立しませんでした。
「フリーランスだからじゃないですよ」という部分
よく見積りを提示したお客様に本当にこれで大丈夫?と聞かれることがあります。多分、相見積もりをとって他社の見積りと比較されているのだと思いますが。
なぜ、安いお見積りを出せるのか少しだけ種明かしを
その前に、先日お客様は見積の妥当性を見てほしいいと(作るばかりじゃいないんです!こんなアドバイスも行ってますよ!)ご相談を受けました。
細かい機能毎に工数が掲載されている見積書です。
- ログイン機能 設計:0.5人日 開発:1人日 テスト:0.5人日
- 会員登録機能 設計:1人日 開発:2人日 テスト:0.5人日
- 会員修正機能 設計:0.5人日 開発:1.5人日 テスト:0.5人日
(ちなみに、WEBシステムで設計・HTMLのコーディング・総合テストの費用は別で機能開発部分のみの見積もりを抜粋しています)
とある会員制のサイトを作りたいと見積依頼をされたそうです。見積もりを取った会社は創業10年以上の受託開発をメインに事業をされているソフトハウスでした。
「何か特別な機能でも依頼していますか?」と質問すると、特に無く、やりたいことを説明して、「△△△のようなサイト」を作りたいと依頼したようです。
見積もりを見てみると、単純に登録されている会員情報を認証して、ログインの可否を判定するプログラムの開発に本当に2人日かかるのでしょうか?受託開発をメインに10年やっていれば様々なシステムのログイン機能を開発してきていると思います、それの設計に4時間?開発に8時間?テスト(他に総合テストの見積もりがありましたので、多分単体テストでしょう)に4時間?合計2日間。私ならとは書きませんが・・・
私の場合、受託開発を初めて、6年。基本的に知り合いのどうしてもというご依頼以外の下請けはせずに、元請けのみで事業をしてきました、その中で、お客様固有のロジック以外のどんなシステムにでも適用できる機能を山のように開発してきました。契約書には独自ロジック(お客様から提示された詳細なロジック)は転用しないが、どこでもあるようなロジック(例えば一般的な問い合わせフォームやログイン機能など)は流用する可能性があることなどを明記しています。それらのどこにでもあるような処理をなんちゃってオブジェクト指向型に改造してストックして、資産として保有しています。
前述のログイン機能であれば、アレとコレとアレを組み合わせて、テストすればという具合で様々にシステムに対応できるようにしてあります。受託開発以外にも自社サービスとして提供しているSMART CLOUD POSやその他のASPサービスで開発した様々なロジックが大量に用意されていて、一般的なWEBシステムであればほとんどがそれらを組み合わせて使うことで開発可能になっています。その他にもなんちゃってフレームワークは基本的に無償で、私以外の開発会社にメンテナンスやバージョンアップの開発を依頼してもそのまま利用して頂いて良いという形でご提供しています。
確かに上記のログイン機能をゼロからスクラッチで作れば2日位かかるのはわかりますが(本当に?)殆どの場合そんなことは無いでしょう?
つまり、フリーランスだから安いわけではなく、過去に開発した資産(プログラムそのものだけでなく、設計内容なども)について、著作権に注意して的確に資産としてストックしてあり、多くのお客様が共通で使うような仕様についてはそれらを流用するため安いのです。
ご相談を受けたお客様にはこれらを説明して、交渉してみてくださいとお話しましたが、若干の値引きはあったものの交渉はうまく行かなかったようです。結局、私共に開発をご依頼頂きました(○○社長すみません、現在、手一杯でお待たせすることになってしまって・・・)。
独立する際に自分自身に誓ったことがあります、
- SE派遣型の組織は絶対に作らない(これってシステム会社じゃなくて、派遣会社になっちゃいますもんね・・・)
- 偽装請負となるような仕事は絶対に請けない(何のために独立したんでしょう?)
- ITに疎い取引先相手に、ボッタクリ見積は絶対に出さない(嘘は絶対にバレます)
- 自らの資産で車輪の再発明はしない、その代わりに過去に利益を上げた資産で重複して儲けない※アイディアの盗用や著作権については要注意ですが
これらを守ると、必然的に安くなるのです・・・
あくまで個人的な考えですが、IT系の受託開発業務は、
- 労働集約型の業務(プログラミング・コーディングなど)
- 知識集約型の業務(提案・設計・分析など)
がありますよね、私がお出しする見積りは、労働集約部分と知識集約部分がなるべくわかるように(お客様が詳細まで理解できるかは微妙ですが、見積りの妥当性や値引き交渉時に説明をしてご理解いただきます。)しております。
たった6年間の経験ですが、役務の種類それぞれに対して適切な見積もりをすれば必然と他社よりも安い見積もりを出せる。逆に言うと知識集約型の業務に対する企業努力を行えば、必然的に労働集約型の業務に対する見積もりの割合が増え、他社よりも安い見積が出せることがわかってきました。
ただ、難しいのは労働集約型の業務ばかりやっていると、最新技術をビジネスとして実践する場がなくなるので、エンジニアとしてもコンサルタントとしても知識を蓄えることがおろそかになるため、常に最新技術の動向に目を光らせていないと行けないことくらいでしょうか・・・
若干、敵を作りそうな内容ですが、GWですので
では、皆様よいGWを!!